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2022年10月13日 (木)

ナビゲーションシステム等の先端機器を利用した場合における過失認定

 先日、背骨を骨折した患者に対し、骨を固定するための医療金具を脊椎に挿入する手術を行ったが、その際に、誤って脊髄まで圧迫してしまった、その原因が、手術を行っていた医師としては金具挿入時に違和感を感じていたが、手術用ナビゲーションシステムのモニター画面では適切な位置と表示されていたため挿入を続けたためだったという事案で裁判になっていたところ、和解が成立したという記事を読みました。

 上記記事を読んだ際に、ナビゲーションシステムの利用は手術を正確・安全に実施するためのものであり、現在はかなり精度も上がっているのだから、場合によっては医師の「感覚」よりもナビゲーションシステムを信用すべき場合もあり得るのではないか、そのような場合において過失の認定をどのように考えるのか疑問に感じ、ナビゲーションシステムについての文献を少し読んでみることにしました。

 文献によれば、ナビゲーションシステムにはいろいろな種類があるものの、いずれの場合においても、患者の解剖学的情報と、術前・術中の画像情報との位置合わせ(レジストレーション)が最も重要だそうです。

 つまり、ナビゲーションシステムの仕組みとしては、位置感知システムと当該システムに基づくデータを高速画像処理するワークステーションから構成されているわけですが、位置感知システムを正確に作動させるためには、正確な情報、つまり正確なレジストレーションが重要であり、レジストレーションが正確に行われていれば、モニター上に示される位置と、真の位置との違いは1ミリ以下になるそうです。

 では、レジストレーションが正確になされていれば、全く問題がないか、というと、どうもそうではないようです。

 「誤差1ミリ以下」と聞くと、もはや驚異的な誤差の範囲内のように思いますが、やはり、小さくても誤差があることには変わりはなく、また、金具挿入時等に椎体が動いてしまうこともあり、そのために誤差が大きくなってしまうこともあるとのことでした。

 上記を踏まえると、「レジストレーションをきちんと行っていなかった」場合は「過失」が認定される可能性が高くなるのでしょうが、現時点においては、レジストレーションをきちんと行っていた場合であっても、ナビゲーションに依存することなく、術前に把握した情報に基づいて医師自らが判断しない限り、やはり過失が認定される可能性があるのだろうと感じました。

 今後、このような機器等を用いた手術に関する裁判例等も増えるかと思いますので、注視していきたいと思っております。

                                 弁護士 大城 季絵

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