医療事故の調査について
医療事故の相談においては、医療記録を見ないで有意なアドバイスをすることはできませんが、それを理解していないのではと思われる人がまま見受けられます。その場合は、医療記録の開示請求をしたうえで医療記録を持参のうえ再相談を求めるというアドバイスのみとなってしまいます。また、「手元にある関連する資料のすべてを持参することが望ましい」と研究会の本にも書かれているところですが、資料を持参しない人もまま見受けられます。その場合は、アバウトなアドバイスしかできないことを念押ししたうえで話すことにならざるをえません。
医療記録が持参されている場合は、話の内容に係る事実関係から、過失、因果関係、損害という要件ごとに医療記録で裏付けをとりながら分析すれば、1時間の相談時間で、「医師や病院に責任を問うのは難しい」か否か、おおよその見当をつけることができます。
医療事故の可能性がある場合は、問題となっている分野を専門とする医師に医療記録を読んでもらい、専門家としての意見を聴取することが必須となります。調査には、弁護士費用、調査活動の実費、専門の医師への謝礼金等、それ相当の費用がかかることになりますので、調査結果の内容次第で、かけた調査費用が無駄になってしまう可能性があることを念押ししたうえで調査を受任することになります。それでも、その調査結果が、依頼者が「今まで考えていたのとは違う見解」であった場合、依頼者の納得が得られないことがあります。
そのため、調査を受任する前に、すべての医療記録の開示請求を相談者に求め、すべての医療記録を揃えたうえで専門の医師の意見聴取ができるように準備を整えたうえで、私自身もその医療記録を検討して調査結果についてのおおよその判断をつけてから調査を受任するよう心がけるようにしています。
弁護士 山内 容