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2017年8月25日 (金)

医療水準について

先日、体重1500グラム以下の状態で人工心肺の装着を受け、その後、生後半年ほどで再度人工心肺装置を装着した上で心臓の手術を受け、無事退院したというニュースに触れました。

大切な命が救われたことは大変喜ばしいことであり、なにより、ご両親をはじめとするご家族の気持ちを思うと、よかったなあと心から思います。

そして、同時に、医療・医学の進歩に驚かされ、とても感心しました。

体重が1500グラム以下の赤ちゃんについては「超低出生体重児」とよばれていますが、「生出生体重児」といわれる、いわゆる標準的な赤ちゃんの体重が2500グラム以上4000グラム未満であることを考えると、かなり小さな赤ちゃんであることは、お分かりいただけると思います。そのような体の小さな赤ちゃんの、しかも心臓の血管の手術を、人工心肺を装着する形で行うことが可能になったわけですから、医学の進歩は目覚ましいものだと思います。

ただ、新規の治療法を受ける場合には、一定のリスクが存在することも事実ですし、患者の立場に立てば、「自分が受診した医療機関が、新規の治療法を前提にして診療を行う義務を負っているのか」、「新規の治療法を前提にして診療が行われていれば病気が治癒していたのではないか」という点が気になるところではないかと思います。

この点問題になるのが、医師の注意義務の基準となる「医療水準」です。

この医療水準に関し、判例では、「ある新規の治療法の存在を前提にして検査・診断・治療等に当たることが診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準であるかどうかを決するについては,当該医療機関の性格,所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべきであり,右の事情を捨象して,すべての医療機関について診療契約に基づき要求される医療水準を一律に解するのは相当でない。そして,新規の治療法に関する知見が当該医療機関と類似の特性を備えた医療機関に相当程度普及しており,当該医療機関において右知見を有することを期待することが相当と認められる場合には,特段の事情が存しない限り,右知見は右医療機関にとっての医療水準であるというべきである。」と判示されています(最二小判平成7年6月9日民集49巻6号1499頁)。

なかなか分かり難いかもしれませんが、上記判例の内容をごく簡単に述べると、医療水準は全国一律に決まっているわけではなく、平均的医師が現に行っている医療慣行のとおりに治療を行ったからといって必ずしも医療水準を満たしているわけではない、医療水準に関しては、医療機関の性格や所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮して判断すべきであるということです。

患者さんにとっては、病気が治癒し、なにも問題が発生しないことが一番ではありますが、もし、皆様のなかで、ご自身の治療方法等に疑問をお持ちの方がいらっしゃいましたら、当研究会でお話をお伺いすることもできますので、ご連絡ください。

                                 弁護士 大城 季絵

医療事故研究会HP http://www.iryoujiko.net

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