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2017年1月24日 (火)

医療ADR仲裁人雑感

以前のブログでも,どなたかが,弁護士会の紛争解決機関である医療ADRについて紹介していたと思いますが,私は今まで仲裁人として,多くのケースに関与してきました。

そして,まだまだ利用していただけるケースは多いのではないかと思い,現時点で考えていることを書いてみます。

 

私は,医療ADRに適しているケースは,過失を認めるか否かは別にして,医療機関も自らの施設で起きた悪しき結果であると受け止め,何等かの形で患者側に謝罪したいと思っているが,当事者間ではうまく話し合いができないケース,だと思います。

間に医療過誤に精通している人を入れないと,いざ医療機関が「誠意」を見せようとしても,たとえば患者側は「損害賠償するのだな。」と考え,何千万円の請求をしてみたり,その後,話がかみ合わなくなることが考えられます。

短い文章でこのあたりの機微を正確に書ききることは困難なので,書きませんが,医療機関が患者側に配慮する場合のスタンスは,損害賠償に限ったことではないということです。

もちろん,いずれにしても,解決に至るまでには,相互の十分な対話,患者側の納得が必要です。そして,その対話のお手伝いには,医療ADRが最適なのです。

東京都の3弁護士会で,それぞれ仲裁人の体制が異なっていますが,我々医療ADR仲裁人候補者は,3弁護士会すべての医療ADRから依頼を受けています。

私が所属する東京弁護士会は,日頃患者側で代理人をしている弁護士,同医療側の弁護士,仲裁人の経験が長い弁護士の3人体制で行っています。リストを見て,仲裁人の指名もできます。

 

反対に,医療ADRの利用の仕方に問題があるのではないか,というケースもいくつかありました。すべて患者側に代理人がついているケースでした。裁判では勝訴は困難だが,医療ADRに持ち込めば,多少何とかなるのでは,という「ポリシー」で持ち込んでいるのだそうです。

しかし,そのようなケースが増えると,本制度に対する医療機関からの信頼がなくなることは明らかです。実際,医療側の弁護士と,私の依頼者の事件で交渉しているとき,医療ADRの話になり,「病院から金を無理やり出させる制度なので,応諾しないことにしている。」と言われたことがあります。

また,医療機関側に,詳細な質問を繰り返すことを「対話」と誤解されている人もおられ,医療ADRの場で仲裁人として聞いていた私は,我慢できずに,「そういうことは,裁判を起こして証人尋問で聴いたらどうか。」と言ったこともありました。

 

しかし,見方を変えれば,上記のようなケースも,「医療ADRの利用の仕方」について仲裁人と当事者が「対話」できることになり,双方の意見をぶつけ合うことで,本制度がより進化するトリガーとなり得るのかもしれません。

より広く,特に,「弁護士さんを代理人に立てる費用を考えると躊躇する」という方に,利用は有料ではありますが,医療ADRの検討をお勧めします。

  弁護士 羽賀 千栄子

医療事故研究会HP http://www.iryoujiko.net

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