医療事故調査制度の第三者機関指定
今年10月から,医療事故調査制度が施行されますが,本日付の新聞各紙で,厚生労働省が,第三者機関を指定したことが報道されています。
医療事故調査制度とは,医療事故が発生した医療機関において院内調査を行い,その調査報告を民間の第三者機関が収集・分析することで,再発防止につなげるための医療事故に係る調査の仕組み等を,医療法に位置づけ,医療の安全を確保するものです(厚生労働省ウェブサイトより引用)。
この制度の問題点の解説として,非常に分かりやすいのがNHK時論公論(2015年7月9日)でした。時論公論のウェブサイトを見てみますと,主な課題として,医療機関が「医療事故」の該当性を判断すること,調査は中立的機関によるものではなく院内調査であること,報告書が遺族に交付されない可能性があること(調査対象となる医療事故は,死亡又は死産に限られていますので,患者本人ではなく遺族が報告を受けます。),が挙げられています。
医療事故に携わる弁護士としては,遺族に報告書が交付されない可能性があるという点は,改善を要すると感じます。この背景には,報告書を証拠として用いることで,提訴が容易になってしまい,病院が責任追及を受けることになり,制度目的に反するということがあるようです。確かに,この制度の目的は,責任追及ではなく,医療事故の再発防止という点にあるのですが,この制度は,民事訴訟法に基づく証拠の収集や提出を排除しているわけではありませんので,遺族への報告書の交付を拒否したからといって,提訴防止にさほど効果があるとは思えません。すなわち,ご家族を亡くした遺族は,真相究明を強く望むことが通常ですので,得られる情報が少なければ,真相究明の手段として,訴訟を利用したいという心理になることが多く,訴訟手続の過程で報告書の入手を望むと思われるのです。
この制度によっても,報告書を遺族に交付することが禁じられているわけではありませんので,調査を実施した病院が報告書を遺族へ交付するという例が増えるとよいと思います。
弁護士 鶴田 信紀
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