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2015年5月22日 (金)

追悼 佐々木静子医師 -聖女のような献身的医師の生きざま


 埼玉県所沢市に、乱診乱療で有名になった富士見産婦人科病院があり、ある日、新聞各紙は、「患者をだまし開腹手術」「無免許経営者が指示」「次々に子宮・卵巣を摘出」「でたらめ診療 被害者数百人」との見出しで報道した。筆者は、この事件の被害者弁護団の一人として、長年、この損害賠償裁判に携わった者です。

 医療事故の被害者の救済にあたり、最も重要なのは協力医師です。信頼できる協力医を得ることができたら、その事件の半分以上は見通しがついたと言っても過言ではありません。

 しかし、被害者の立場に理解のある協力医師を探すことは至難のわざです。

 富士見産婦人科病院事件の場合、婦人科医の社会的責任が追及される事件であったため、なお一層その分野の協力者を得る事は難しいことでした。日本産婦人科学会は、学術団体だから具体的な事件には関与しないのだと被害者同盟の事案の真相究明と協力とお願いにそっぽを向くという無責任で冷淡な対応を続けておりました。日本母性保護協会(当時)も同様です。被害者のために協力しようという医師は皆無でした。僅かに弁護団の旧知の東大病院内科の本田勝紀医師ら極く少数の方が協力を申し出てくれました。しかし裁判の場合、産科・婦人科の専門医の協力が不可欠でした。悩み苦労していたところ、ある弁護士の紹介で救世主佐々木静子医師(当時賛育会院産婦人科。親しみを込めて以下佐々木さんと呼ばせてもらいます)を見つけることができました。 

 佐々木さんは、被害者への同情、理解があり、しかも冷静で個々の患者のカルテ、検査記録などを調査、検討される熱心さを持った先生でした。被害者の提訴のために佐々木さんは原告67人全員の鑑定書を一人で書いてくれました。しかもご自身の病院業務もこなしながら被害者のためにいつも明るく精力的に取り組んでくれました。その姿はまさに、村八分にされかねない医学界の四面楚歌の中で泥沼に咲いた清楚な一輪の白百合のように、また一人の聖女のような凛とした気高さが感じられました。

 佐々木さんは、長時間、法廷の証人尋問に協力してくれました。裁判は23年もかかりましたが、病院側に最高裁で最終的に勝訴することができました。

 悲しいかな、2013年6月14日、佐々木静子さんは癌で亡くなられました。

 葬儀に来られた人々へ佐々木さんは予めその日のためにメッセージを用意され、参加者に配布されました。手回しの良さに驚きました。参加者へ御礼を述べたあと、「今日は、皆さまからいただいた香典は私がライフワークにしてきた女性のための運動の団体に寄付をさせて下さい」と結ばれていました。佐々木さんが尽力していた女性のための運動とは「女性の安全と健康のための教育センター」、「性暴力被害者支援看護職(SANEセーヌ)」の養成、「性暴力救援センター東京(SARC,サーク東京)」などのことでした。佐々木さんの遺志を継ぐ、第二、第三の佐々木医師が生まれることを切望してやみません。

 なお、様々な分野で道を切り開いてきた女性たちを月替わりで紹介するカレンダー『姉妹たちよ、女の暦2015』に佐々木さんが掲載されております。
http://www014.upp.so-net.ne.jp/jojokikaku/products/koyomi/2015koyomi.html

佐々木医師の著書として『おんなのからだの本』(1986年草土文化刊)、『30歳からのおんなのからだ』(1988年同社刊)などがあります。

 被害者同盟も、『富士見産婦人科事件―私たちの30年のたたかい』を出版しました(2010年、一葉社刊)。http://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784871960458 

佐々木先生およびこの事件に関心のある方は是非お読み下さい。謹んでご冥福を祈ります。

                                      弁護士 内田 剛弘

医療事故研究会HP http://www.iryoujiko.net

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