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2015年4月14日 (火)

美容医療と広告の問題

  インターネットを始め,チラシ,新聞,フリーペーパーなど,ちまたには美容医療の広告があふれています。広告には,美しくなりたい,より良くなりたいという我々の素朴な願望をくすぐる宣伝文句と共に,これらの施術が手頃な値段でできるといった宣伝がなされていることも多々あります。これなら自分でも何とかなるかもしれない,と広告を握りしめて思い切ってクリニックのドアを叩く方もいらっしゃるかと思われます。  
  ところで,国民生活センターに寄せられている美容医療サービスの相談件数は,2012年度は1873件,2013年度は2155件,2014年度は2120(前年同期1790)件(2015年2月28日現在)とあり,増加傾向にあります。しかもこれらの相談件数のうち,販売方法や広告を問題にしている相談が,2012年度は999件,2013年度は1194件,2014年度は1193(前年同期 982)件(2015年2月28日現在)とあり,相談件数の半数(以上)を占めている状況です。
  医療ミスという医療特有の問題の他に,このような販売方法や広告などのいわゆる『勧誘』が問題になるのは,他の医療分野では見受けられない,美容医療特有の問題といえるでしょう。これは,美容医療の分野では,自由診療による治療が他よりも多く,他方で美容医療を扱っている他のクリニックとの差別化を図ることが問題となっているからと思われます。
  ところで,医療広告に関する法制度等の枠組みとして,①医療法と医療法に基づく関連ガイドライン、②医療法に基づかないガイドライン、③その他医療関係法令ではない法令に基づく規制という整理ができます。①として医療法,施行令,施行規則,告示があり,さらに医療広告ガイドラインと医療広告ガイドラインに関するQ&A,②として医療機関ホームページガイドライン,③として景品表示法と薬事法が考えられます。
  このうち,ホームページについては注意が必要です。すなわち,医療機関ホームページでバナー広告とリンクしているものが医療広告規制の対象となり,バナー広告とリンクしないホームページは,医療機関ホームページガイドラインの対象ではあるが、医療広告規制の対象ではないとするのが厚生労働省の見解なのです(バナー広告とリンクしないホームページは医療広告にはあたらないという扱い)。その理由は,バナー広告とリンクしていないホームページは,患者が検索してその医療機関の名称を認識した上で当該ホームページにたどり着くことから,広告該当性の判断基準となる3要件(①誘引性,②特定性,③認知性)のうち,③認知性を満たさないためと説明されています。
  昨今,ホームページの情報を判断材料の一つとしたり,インターネットの検索エンジンを用いることが当たり前になっていることを考えると,この様な考え方には,違和感を覚えるところです。このような厚生労働省の見解については,日弁連でも意見書を出すなどしてこのような解釈に異を唱えているところですが,未だ解決されていない問題でもあります(なお,誇大広告や虚偽広告などが景品表示法との関係で問題になることはあります)。  このように法規制では十分にフォローされていない部分があることも踏まえつつ,利用者としては,このような広告を見たときに,立ち止まってもう一度よく考える必要があると思われます。  
  国民生活センターのホームページでは「全国の消費生活センターに寄せられる美容医療に関するトラブルでは、・・・不安をあおったり、割引を強調したり、即日決断を迫るなどの問題勧誘が見られます。広告で紹介されていない高額な施術を勧められるなど、広告に関する問題もあります。美容医療の中には健康保険が適用されるものもありますが(真性包茎等)、仮性包茎や脱毛、二重まぶた、豊胸、脂肪吸引等はほとんどが保険外診療であり、消費者が費用を全額負担することになります。価格はクリニックが自由に設定するため、他のクリニックと比較検討するなど情報収集が必要です。また、費用総額や支払い方法だけでなく、施術の限界やリスクなどの説明も十分に受け、そのうえで手術を受けるかどうかをよく考え、よく検討することが大切です。・・・」といった注意喚起がなされております。利用者としても,広告の情報のみに依存するのでは無く,幅広く情報を収集し,時にはやめるという判断をすることも含め,主体的に選択をしていく,ということが重要と思われます。                                                
                                                                                                                                                                                            弁護士 洞澤 美佳

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