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2014年11月 4日 (火)

証拠保全

「保全の必要性は,従前より厳しく判断されるようになっている。」

久し振りの証拠保全。共同で配点を受けた先生のところに裁判官から電話があり,そのように言われた。保全の申立ては何度かしたが,すんなりと決定が出たことはなかったように思う。詰めが甘いせいと言われれば仕方ないが,裁判官も,内容如何に関わらず,必ず何か宿題を出すことを使命としているように思えて仕方ない。そこで申立ての理由を補充した。

充分な説明がなされておらず,責任回避の態度であること。患者側の説明要求に対する医師・医療機関の対応の不誠実さ

不適切な説明がなされていること,当初の説明とは全く異なる結果が生じていること

・過誤の程度のひどさ,非常に初歩的なミスであること,一見して通常の医療行為からはあり得ない結果が発生していること

・従来から各種の文献で改竄が一般的であることが指摘されていること,過去の事例を見ても実際に改竄されたことを立証することが難しいにもかかわらず改竄が認められた事例が散見されること,誤りを犯した者には不利益な証拠について改竄の誘惑があること,排他的支配下にある証拠についての改竄の容易さ等

ところが,裁判官から再度のダメ出しがあり,わざわざ保全をするからには,「放っとくと改ざんする」と疑わせる事由,申立人が不審に思う事情の補充がなければならないという。まったく一般的・抽象的な主張では足りないにしても,改ざんや隠匿について具体的な虞れの疎明までは必要ないと思っていた。実務の取扱いが変わったのだとすれば,その理由はなんだろう。厚労省の通知や医師会の指針,条例やガイドラインが整備され,任意の開示が一般的になってきたこと,電子カルテの普及により,痕跡を残さずに改ざんすることが困難になったと思われていることだろうか。しかし,任意に開示するかどうかということと改ざんの虞れがあるかどうかとは別であるし,電子化されていない病院もまだまだある。そんなにあからさまに今にも改ざんされそうな場合など,むしろないように思う。

まだ結論は出ていないが,他の事案でも,最近は同じような運用の仕方をしているのだろうか。

この事件では,不自然に思えたことがもう一つある。生体移植の倫理についてはよく知らなかった。事案は,病院が糖尿病性腎不全の進行を見落としたというもので,現在,透析中の依頼者に対し,知人が腎臓の提供を申し出た。しかし,これを病院に伝えたところ,二親等以内の親族か配偶者でなければドナーになれない,と断られたという。最初,適合性のことを問題にしているのかと思い,配偶者を適格者に掲げることを不自然に感じた。臓器売買を禁ずる臓器移植法の趣旨を汲んで利益供与などがなされないよう,医療機関が自主的に規制していると聞けば,それは理解できる。問題は,その病院が依頼者に対し,知人と養子縁組でもすれば移植できる,と答えたという点である。結局,根本を疎かにしていると非難することは容易だが,親子であろうと夫婦であろうと他人であろうと関係の深さ強さは量れない。医療機関としても,判り易い形式的な判断基準に拠らざるを得ないのだろうと,納得することにした。

                        弁護士 佐藤 淳

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