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2014年7月17日 (木)

医療器具用語

ステント(英stent)という物があります。金属製網目の筒状のもので冠動脈内

などに挿入して内部から管を拡張する装置です。

 類似した用途の器具である「バルーン」とか「コイル」などは知っている言葉

なので何かしら想像ができますが、「ステント」は語を聞いただけではどんなもの

かさっぱり分かりません。調べて見ると19世紀の歯科医師の名だそうです。

 ステント歯科医師は1807年にイングランドのブライトンで生まれ、義歯を作る

ときの印象(陰型)に「グッタペルカ」という天然樹脂を用いる方法を考案した人

だとのことです。

 語源として否定する説もあるらしいのですが、論文があり、その樹脂が19世紀

後半に「Stents」という名で売り出されたことから始め、その言葉が少しずつ違う

場面で使われていき、最終的に、その語を今日の「ステント」を指す語として

用いた最初の論文が1983年に公刊された(最初の冠動脈ステント施術は1986年)

ことまで論証していました。言葉はその対象も変わるといういい例です。

 これに対し、ステントをその場所まで運ぶ「カテーテル」(独Katheter,

catheter)の方は明解で、send downを意味するギリシャ語動詞の語幹kathe-と

「~する道具」をあらわす語尾-terを合成した語とのこと。senddown」 が用い

られたのは、最初は尿のための器具だったからでしょうか(私の推測です)。

 昔の西欧医学者はギリシャ語ラテン語の、日本の医学者は漢語の素養がそれぞれ

すばらしく、両者の語彙には頭が下がります。


                                                               弁護士 澤本 淳

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