2017年11月 2日 (木)

全国交流集会

1027日、28日に、「医療問題弁護団・研究会 全国交流集会」が東京で開催されました。

Drphoto20171027_3 当研究会からは、専門家の医師をお招きして「高齢者に潜む怖い障害 廃用症候群」という演題でご講演いただいた後、当研究会会員の弁護士から高齢者特有の医療リスクや高齢者の手術適応、検査、薬剤投与等に関する裁判例を報告しました。

私も報告者の一人として関与しましたが、具体的な事件を離れて、あるテーマについて裁判例等を調査・研究する時間はなかなか取れないこともあり、今回は勉強する良い機会をいただいたと思っています。

今後もこうした活動に積極的に取り組み、研鑽を積みたいと思います。

 弁護士 品谷圭佑

 

 

2017年9月21日 (木)

全国交流集会について

 毎年1回、本研究会のような、全国各地にある医療事故問題をあつかう弁護士の任意団体が集まって交流集会を開催しています。交流集会では、各地の医療問題を扱う弁護士が集まって、テーマを決めて研究発表したり、意見交換をしたり、あるいは、医師を招いて、専門的な話をうかがったりしています。開催地は、その年ごとに異なるのですが、今年は東京で行われ、本研究会からも発表を行います。テーマは、日本の高齢化にともなって、最近テレビなどでも話題になっている老人性廃用症候群の他、高齢者の医療事故などについてです。老人性廃用症候群について専門家の医師をお招きしてご講演いただくとともに、研究会所属の弁護士らが高齢者の医療事故裁判例などを調査した結果を発表します。このように、当研究会では、全国の弁護士らと協力して、幅広く研鑽をかさね、相談に来られた方に的確な対応ができるようにしています。

                          弁護士 東 麗子

医療事故研究会HP http://www.iryoujiko.net

2017年8月25日 (金)

医療水準について

先日、体重1500グラム以下の状態で人工心肺の装着を受け、その後、生後半年ほどで再度人工心肺装置を装着した上で心臓の手術を受け、無事退院したというニュースに触れました。

大切な命が救われたことは大変喜ばしいことであり、なにより、ご両親をはじめとするご家族の気持ちを思うと、よかったなあと心から思います。

そして、同時に、医療・医学の進歩に驚かされ、とても感心しました。

体重が1500グラム以下の赤ちゃんについては「超低出生体重児」とよばれていますが、「生出生体重児」といわれる、いわゆる標準的な赤ちゃんの体重が2500グラム以上4000グラム未満であることを考えると、かなり小さな赤ちゃんであることは、お分かりいただけると思います。そのような体の小さな赤ちゃんの、しかも心臓の血管の手術を、人工心肺を装着する形で行うことが可能になったわけですから、医学の進歩は目覚ましいものだと思います。

ただ、新規の治療法を受ける場合には、一定のリスクが存在することも事実ですし、患者の立場に立てば、「自分が受診した医療機関が、新規の治療法を前提にして診療を行う義務を負っているのか」、「新規の治療法を前提にして診療が行われていれば病気が治癒していたのではないか」という点が気になるところではないかと思います。

この点問題になるのが、医師の注意義務の基準となる「医療水準」です。

この医療水準に関し、判例では、「ある新規の治療法の存在を前提にして検査・診断・治療等に当たることが診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準であるかどうかを決するについては,当該医療機関の性格,所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべきであり,右の事情を捨象して,すべての医療機関について診療契約に基づき要求される医療水準を一律に解するのは相当でない。そして,新規の治療法に関する知見が当該医療機関と類似の特性を備えた医療機関に相当程度普及しており,当該医療機関において右知見を有することを期待することが相当と認められる場合には,特段の事情が存しない限り,右知見は右医療機関にとっての医療水準であるというべきである。」と判示されています(最二小判平成7年6月9日民集49巻6号1499頁)。

なかなか分かり難いかもしれませんが、上記判例の内容をごく簡単に述べると、医療水準は全国一律に決まっているわけではなく、平均的医師が現に行っている医療慣行のとおりに治療を行ったからといって必ずしも医療水準を満たしているわけではない、医療水準に関しては、医療機関の性格や所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮して判断すべきであるということです。

患者さんにとっては、病気が治癒し、なにも問題が発生しないことが一番ではありますが、もし、皆様のなかで、ご自身の治療方法等に疑問をお持ちの方がいらっしゃいましたら、当研究会でお話をお伺いすることもできますので、ご連絡ください。

                                 弁護士 大城 季絵

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2017年8月 8日 (火)

医療事件の個別性について

1. 法律事務家である弁護士の業務の中心は、個別・具体的な案件(例えば、AさんとBさんの間で、〇〇〇〇をめぐって紛争となっている。)を解決するというところにあります。最近は、企業法務や社外取締役等において、やや一般的な法的スキームに関わることも増えていますが、その場合にも、会社ごとや案件ごとの個性があります。

2. 医療事件についていえば、案件ごとの個別性の程度(事案による違い)は、他の案件よりもさらに大きいと感じられます。1人ひとりの身体の状況(病状)や、それに対する医療措置、その後の状況の変化は、決して同一ではありません。医療技術の進歩と医療の細分化がこれに拍車をかけています。

 従って、医療事件を何年も取り扱っていると、多少は蓄積ができてきますが、その都度、新鮮な気持ちで取り組まなければなりません。

 相談者の中には、「新聞で私の親と同じケースについて病院の責任が認められていた。」とおっしゃる方がおられ、そう思うのも無理はありませんが、弁護士としては、案件ごとの個別性を分かっていただいた上で、相談者と共に戦っていくことになります。

                  弁護士 上田 正和


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2017年6月13日 (火)

無痛分娩の訴訟に関する報道

昨日来、京都府の産婦人科で無痛分娩の施術ミスにより重度障害を負ったとして、患者の夫らが医院に対し、損害賠償請求訴訟を提起したとの報道がなされています。

報道から読み取れる情報を基に考えると(私が読んだのは読売新聞、京都新聞、産経新聞及び毎日新聞のいずれもインターネット版です。)、(1)麻酔針が硬膜を破ってくも膜下に達したのか、(2)麻酔薬の投与量が多すぎたのか、(3)(1)又は(2)の事実があったとして、それらは)医師の注意義務違反によるものかが主たる争点になって審理が進行していくのだろうと思います。

私は、無痛分娩の大まかなメリット・デメリット、海外での実施例が多いものの日本ではあまり浸透していない状況にあるという程度の知識しかありませんので、踏み込んだ考察はできませんが、この訴訟で問題となっているのは、医療行為を巡り医師・医院側に「ミス」があったか否かですから、無痛分娩のリスクそのものの判断とは分けて考えることが肝要と思います。

無痛分娩には、産婦に対するダメージが少なく産後の早い社会復帰が望めるため、特に仕事をしながら出産・育児をする女性にとって大きなメリットがあると聞きます。今回のような報道がなされることによって、重大事故が多いという不確かなイメージが先行して、産婦の選択肢が狭まってしまうことは好ましい状況ではありません。

無痛分娩に限らず医療一般にいえることですが、患者側が医療行為を選択する場合、選択した医療行為によってもたらされるメリットと、その医療行為のリスクの要因と程度を、専門家としての立場ではなく患者の立場として、総合的に考量して判断する必要があると思います。

                                                 弁護士 鶴田 信紀

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2017年2月17日 (金)

医療裁判こぼれ話

 医療裁判では,高度で専門的な医学の知識が必要とされます。

 当然,医療過誤事件を担当する弁護士もその分野の文献や資料に接して一生懸命勉強しますが,多くの弁護士はやはり医者ではないため,限界があります。

そこで,患者側の立場に立って医学的な意見を述べていただける協力医の存在が不可欠になります。

 具体的には,患者及びご家族の依頼を受けて医療過誤の可能性について調査する段階での意見,裁判段階での私的な意見書の作成,また,病院側の医師の主張に対して意見を頂戴し,場合によっては証人尋問を受けていただくこともあります。

 このように,医療裁判を進めるにあたっては,協力医との信頼関係と友好関係の構築が非常に重要となりますが,そのように考えると,医療裁判を手がける弁護士にとっては,医療裁判そのもののスキルのほかに,いかに良い協力医に巡り会うことができるか,医師との人脈作りも非常に大切であることを痛感させられます。

 この医師との人脈作りは,まだ自分は全く不充分ですので,医療事故研究会での活動を通じて,医師との人脈もどんどん開拓していきたい,と思っています。 

                  弁護士 松井 創 

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2017年1月24日 (火)

医療ADR仲裁人雑感

以前のブログでも,どなたかが,弁護士会の紛争解決機関である医療ADRについて紹介していたと思いますが,私は今まで仲裁人として,多くのケースに関与してきました。

そして,まだまだ利用していただけるケースは多いのではないかと思い,現時点で考えていることを書いてみます。

 

私は,医療ADRに適しているケースは,過失を認めるか否かは別にして,医療機関も自らの施設で起きた悪しき結果であると受け止め,何等かの形で患者側に謝罪したいと思っているが,当事者間ではうまく話し合いができないケース,だと思います。

間に医療過誤に精通している人を入れないと,いざ医療機関が「誠意」を見せようとしても,たとえば患者側は「損害賠償するのだな。」と考え,何千万円の請求をしてみたり,その後,話がかみ合わなくなることが考えられます。

短い文章でこのあたりの機微を正確に書ききることは困難なので,書きませんが,医療機関が患者側に配慮する場合のスタンスは,損害賠償に限ったことではないということです。

もちろん,いずれにしても,解決に至るまでには,相互の十分な対話,患者側の納得が必要です。そして,その対話のお手伝いには,医療ADRが最適なのです。

東京都の3弁護士会で,それぞれ仲裁人の体制が異なっていますが,我々医療ADR仲裁人候補者は,3弁護士会すべての医療ADRから依頼を受けています。

私が所属する東京弁護士会は,日頃患者側で代理人をしている弁護士,同医療側の弁護士,仲裁人の経験が長い弁護士の3人体制で行っています。リストを見て,仲裁人の指名もできます。

 

反対に,医療ADRの利用の仕方に問題があるのではないか,というケースもいくつかありました。すべて患者側に代理人がついているケースでした。裁判では勝訴は困難だが,医療ADRに持ち込めば,多少何とかなるのでは,という「ポリシー」で持ち込んでいるのだそうです。

しかし,そのようなケースが増えると,本制度に対する医療機関からの信頼がなくなることは明らかです。実際,医療側の弁護士と,私の依頼者の事件で交渉しているとき,医療ADRの話になり,「病院から金を無理やり出させる制度なので,応諾しないことにしている。」と言われたことがあります。

また,医療機関側に,詳細な質問を繰り返すことを「対話」と誤解されている人もおられ,医療ADRの場で仲裁人として聞いていた私は,我慢できずに,「そういうことは,裁判を起こして証人尋問で聴いたらどうか。」と言ったこともありました。

 

しかし,見方を変えれば,上記のようなケースも,「医療ADRの利用の仕方」について仲裁人と当事者が「対話」できることになり,双方の意見をぶつけ合うことで,本制度がより進化するトリガーとなり得るのかもしれません。

より広く,特に,「弁護士さんを代理人に立てる費用を考えると躊躇する」という方に,利用は有料ではありますが,医療ADRの検討をお勧めします。

  弁護士 羽賀 千栄子

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2016年12月 6日 (火)

シニアとジュニア

当研究会では、二人の弁護士で初回相談に応じています。一人は医療事故に関して豊富な知識と経験をもつ「シニア」の弁護士と、もう一人は経験こそ多くないものの学習意欲と行動力に自信のある「ジュニア」の弁護士です。そんなジュニアの私が、これまでにシニアに感嘆したお話を少し。

 1時間無料で実施する初回相談に臨む前に、相談者の方に医療事故の内容や治療経過、医師の説明などを記載して頂いた「調査カード」を拝見します。まだまだ医学知識に乏しい私は、当該分野の専門用語の意味や、治療の内容、過去に同種の事例で争われた裁判例などを調べます。よし、これでひとまず知識は大丈夫、と思って初回相談が始まります。

 シニアの弁護士とともに相談者から詳しい経過などを聞き取ります。そして、聞き取った内容をもとに相談者の希望に対する見込みや今後の方針の概要を説明します。

「本件では・・・に問題があるのかもしれません」

「・・・なので病院側の過失を問うのは中々難しいだろうと思います」

 さて、この発言はシニアのものです。ジュニアの中でもとりわけ経験の浅い私にとっては、いかにその分野の医療の知識を頭に入れていたとしても見通し等の一定の判断をするのは容易ではありません。さすがシニアだなあと心の中でひっそりと呟きます。一方、そんな私でもその後の調査や分析に東奔西走し、相談者の依頼に応えられるよう努力します。

 経験豊富なシニアと日々努力するジュニア。このような態勢で医療事故研究会は相談者の方の真摯な相談に日々対応しています。

                                          弁護士 寺谷 洋樹

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2016年11月 4日 (金)

大川小津波判決と過失判断

 

  東日本大震災​​の際,宮城県の石巻市立大川小学校で,​74人の児童と10人の教職員が​津波の​犠牲にな​る悲劇がありました。児童の遺族が県や市に損害賠償を求めていた裁判で,​10月26日,仙台地裁は遺族​に約14億円を支払うよう命じる判決を言い渡しました。

この裁判では,児童の安全に配慮するべき立場にあった教員らに過失があったかどうかが問題になりました。​裁判における過失判断は,「予見可能性を前提とした結果回避義務違反があるか」という形でなされます。​​今回の判決は,​​同小は津波の浸水予測区域に含まれておらず​,過去に津波が同小まで来たこともなかった​ので,事前に津波の襲来は予見できなかった​と認定し,地震直後における予見可能性は否定し​ました。しかし,地震から40~50分が過ぎた午後3時30分ごろ​には​​,​市の広報車が津波の襲来と高台避難を呼びかける放送をし,教員らも​これをも​聞いて​いました。判決は,それを理由に,​同時点で​の予見可能性を肯定する判断をしました。その上で,直ちに児童を​学校裏山の​高台に避難させるべきであったという結果回避義務を認定し,これに反した教員らの過失を肯定したのです。

 さて,裁判における過失判断の構造は,医療訴訟においても同じです。医療訴訟では,医師に,予見可能性を前提とした結果回避義務違反があるか,が争点になります。そして,ある​時点では,悪しき結果を予見して対処することは確かに無理であったが,この時点に至れば予見は可能であり,結果回避措置(例えば緊急手術)を取るべきであった,という​のは,医療訴訟の典型的パターンの一つ​です。​​今回の大川小津波判決と医療訴訟では,前提事実は異なりますが,過失判断において共通する点があるのです。大川小津波判決は,近いうちに判例雑誌に登載されるでしょうから,是非,内容に学んでみたいと思います。

                            弁護士  武谷 元

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2016年9月30日 (金)

美容医療と広告の新たな動きについて

 美容医療と広告の問題については、昨年4月に当研究会のHPでもご案内いたしました。

 とりわけ、医療機関のホームページについては、バナー広告とリンクしないホームページは医療広告にはあたらないという扱いをしていることをご紹介し、そのことが現状多発している美容医療サービストラブルの一因となっていることを指摘しました。

 ところが、本年9月厚労省の「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」が「医療機関のウェブサイト等の取扱いについて(とりまとめ)」と題するものを公表することにより、厚労省がこの流れにストップをかける方針を打ち出しました。

とりまとめでは、まず、美容医療分野を中心に、医療機関のウェブサイト等の閲覧を契機として受診行動に至ることが一般化している中、医療機関のウェブサイト等における情報提供の適正化を図る必要がある、との認識が示されています。

その上で、美容医療以外でも同様に不適切な表示がなされうることや、保険医療機関においても自由診療を行うことがあり指導上の区別が困難であること等を考慮し、美容医療や自由診療に限定せずに医療機関のウェブサイト等に対して共通の規制を設けることが適当であるとしました。

具体的には、医療機関のウェブサイト等による情報提供についても、医療法を改正して規制対象とし、監視・是正体制を強化し実効性を確保することで、不当表示を規制していく方針のようです。

詳細は、厚労省のホームページから、上記とりまとめ等を確認することができますの

で、ぜひご覧になってみて下さい。

( http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000137781.html )

 

                                        弁護士 洞澤 美佳

医療事故研究会HP http://www.iryoujiko.net

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